'21.4.5

ご来場の皆様へ、音声配信のプレゼントを始めます


以前、カフェ・モンタージュのコンサートでは終演後レセプションという時間を設けていました。
公演の終演後に、その場でワインやジュースをお出しして、グラス片手に語らったり、出演者を囲んだり―― 緊張感に満ちた1時間をそれぞれに振り返っていただくひとときは、私たちにとっても特別なものでした。
2012年のこけら落とし公演以来、毎公演ずっと続けていましたが、2020年の2月を最後にそのような時間を設けることが難しくなってしまい、公演の余韻を形のない言葉で共有するその時間をなにかに置き換えることが出来ないか、とずっと考え続けていました。

そこで辿り着いた答えが、「ご来場の方に当日のライブ配信をプレゼントする」というものでした。

2020年6月以降、カフェ・モンタージュでは全ての公演で有料のライブ配信を行ってきました。終演後、早々にお客様も出演者もいなくなってしまってから、先ほどまでの公演の配信チャンネルを開き、スピーカーで流しながら後片付けをするのが私たちの習慣となっていました。ずっと耳を集中していなくても、さきほど受けた強烈な印象が突如として呼び起こされて作業の手が止まり、そのまま聴き入ってしまうことがよくあります。 そのような時間を持つことは、配信を始める以前には存在しなかった楽しみで、コンサートの余韻が引き伸ばされ、体験が深く身体に染み込んでいくような感覚があります。壮絶な演奏に身を委ねた後、レセプションでワインを片手に立ち尽くしていた光景がそこに重なることもありました。もしかしたらご来場のお客様の中にも、そうしたことに喜びを見出していただける方がいらっしゃるのではないかと思ったのです。

コンサートは会場に足を運んで聴いていただくのが一番。でも、それが叶わない人に配信を聴いていただくことが仕事の一つとなってからは、ライブ配信をお届けすることの意義や、配信ならでは楽しみを追求する毎日で、配信のクオリティが上がればその分、会場での楽しみも増えていくという相乗効果があるのではないかといまでは考えるようになりました。

配信をお聴きいただけるのは公演翌日の深夜24時まで。そのあとは聴けなくなってしまうという事も、余韻のプレゼントとしてふさわしいかとも思いました。

カフェ・モンタージュの配信は、ここで開催するコンサートの読み替えでもあって、それは私が毎回コンサートの前説としてお話をしていたことの言い換えでもあると思っています。お届けしたい音楽をなんとか伝えたいと定まらない言葉を選んでいた私が、今はコンサートの度にマイクを選び、位置を調整して、バランスをとるフェーダーを握っています。終演後にもしかして少し時間があって、配信チャンネルを開いていただいたとき、そこに先ほどまでの空気が流れているのを少しでも感じていただけたらとても嬉しく思います。


カフェ・モンタージュ 高田伸也