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「マルセル・デュシャン」
2026年11月20日(金) 20:00開演
デュシャンについて、まずはマラルメから
マルセル・デュシャン(1887-1968)の名前を出すと、ご存じの方は「ああ、あの便器の人ね」と応じてくれます。「既製品をアートにした人」とか「ダダイストでしょ」と返してくれる人もいます。でも、それは両方とも間違いだし、便器以上のことを知っている人はアート関係者でも実は少ない。『デュシャン思考』という本を書いたのは、そんな状況を変えたかったからです。
レディメイドをはじめ、現代アートのジャンルや手法のほとんどはデュシャンが創案しました。ポップ・アートやインスタレーションはこの人なくして生まれえなかったかもしれず、それどころか20世紀以降の芸術は、大半がデュシャンに多くを負っています。アートはもちろん、音楽、映画、演劇、ダンス、写真、デザイン、そして文学や哲学に至るまで。
音楽家では、ジョン・ケージのチャンス・オペレーションへの影響が知られています。ケージばかりでなく、ローリー・アンダーソン、ブライアン・イーノ、ジョン・ゾーン、クリスチャン・マークレーらも「デュシャンの子供たち」です。ピエール・シェフェールやリュック・フェラーリもデュシャンピアンと呼べるでしょう。おそらくは「音響彫刻」をつくったバシェ兄弟も。
刊行を機に「現代アートの父」について2回に分けて話します。すべては語りきれないので、主にデュシャンに影響を与えた/受けた文学者ふたりとの関係について。ひとりは19世紀象徴主義の詩人ステファヌ・マラルメ(1842-1898)。もうひとりは『ゴドーを待ちながら』を書いた劇作家・小説家・詩人サミュエル・ベケット(1906-1989)。両者ともにデュシャンと同様、文学のみならず現代芸術の変革に大いに与りました。連続レクチャーとはいえそれぞれ独立しているので、片方だけを聴くのでも大丈夫です。
今回はマラルメから、お話を始めたいと思います。
― 小崎哲哉(文筆家/アーツ・プロデューサー)
《新刊》
「デュシャン思考」青幻舎
著:小崎哲哉
※ 2026年11月発売予定