15歳で書いた「ソナタ」楽章(D28)の後、シューベルトは15年間もピアノ三重奏に手を付けませんでした。
この分野の再開のきっかけはヴァイオリンのシュパンツィヒやピアノのボックレットといった名演奏家の知己を得たことと考えられており、ヴァイオリンのための「華麗なるロンド」(D895)もそんなヴィルトゥオーゾを前提に作曲された超絶技巧作品です。
変ロ長調のピアノ三重奏曲(D898)は慣例で“第1番”とされていますが、現在では“第2番”変ホ長調(D929)よりも後の、最晩年1828年に成立したとする説が有力です。その根拠の1つとなっているのが変ホ長調の単一楽章作品、通称「ノットゥルノ」(D897)の存在で、これはD898の第2楽章の初期稿とみられています。その超然とした佇まい、中心音の周りを彷徨うような旋律法は最晩年に特有の作風を指し示しています。完成したトリオD898はモーツァルトにも通じる古典的な端正さを湛えていますが、これもシューベルト晩年の「古典回帰」の一例なのかもしれません。
今回は学生時代から親交のある白井圭さん、辻本玲さんを迎え、最高のメンバーによるアンサンブルをお届けします。
― 佐藤卓史
終演後にはスペシャル・レセプションを開催します。ご来場者様のご参加無料です。ドリンク片手にゆっくりと終演後のひとときをお過ごしください。
― カフェ・モンタージュ