「ブラームスの室内楽」
2025年3月5日(水)&6日(木) 20:00開演
【プログラム】
J.ブラームス:
・ピアノ三重奏曲 第4番 ロ長調 op.8 (1889)
・ピアノ三重奏曲 第5番 イ短調 op.114 (1891)
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〈シリーズ第1回公演〉25.2.13&14
2025年3月5日(水)&6日(木) 20:00開演
メルセデス・アンサンブルによるブラームスの室内楽シリーズ。ピアノ三重奏編の完結公演となります。
ブラームスのピアノ三重奏曲「第4番」とは?
1889年に書かれ、1891年に出版された作品。もともと1854年にシューマン夫妻との邂逅を経て書かれたロ長調の第1番を全面的に反映させ、ブラームス自身「op.108となるかもしれない」といったほどに変貌を遂げた三重奏曲です。出版社ジムロックに「新しくなった三重奏曲」として送られ、出版される際には「1891年の新しい版」という注釈付きで1854年の作品と同じop.8の番号を与えられました。
いま現在、ブラームスの室内楽作品の中でピアノ五重奏曲と並んで最も頻繁に演奏されるこのピアノ三重奏曲は大抵「第1番」として紹介されています。有名な作品だけに、名曲としての分かりやすい紹介文がこれまで求められてきたということは想像のつくところですが、1854年の「第1番」がこともなげに取り扱われる中で、ブラームス自身が1854年の作品を否定して取り下げたというような誤った理解までが生まれている現在の状況をなんとかしようという動きが最近は出てくるようになりました。
op.8という同じ番号が与えられた事がこの混乱のもととはいえ、もし出版社が当時そのような形で出版していなければこの作品がここまで広く演奏されることは無かったかも知れないと考えると、それはそれで賢明な判断だったとも思われてくるのです。それではどうすれば良いのでしょうか。ここで、出版社ジムロックのカタログではそれぞれのピアノ三重奏曲がop.8(最初の版)、op.87、op.101、op.8(新しい版)として紹介されていて、当時はそれらに「第2番」や「第3番」などの順番をつけていなかったことに着目しました。
ささやかな提案ではありますが、今回のシリーズでは
第1番 op.8(1854)、第2番 op.87(1882)、第3番 op.108(1886)、第4番 op.8(1889)として、時代ごとの作曲様式をブラームスの生涯に沿って辿る形で皆様にお届けしたいと思いました。
op.8の話の続きとなりますが、ブラームス自身は1854年版と1889年版を比べて「どちらが良いとはいえない」と出版社に書き送っています。
自分の作品について謙遜以上の態度をとっていたブラームスらしい言葉ですが、1889年版がブラームスの晩年の様式で書かれていることをもっともよく物語っているのが、その2年後に作曲されたピアノ三重奏曲 op.114ではないかと考えています。
このop.114は良く知られているようにクラリネットとチェロそしてピアノの為の三重奏曲として1891年に書かれました。ミュールフェルトとハウスマンというどちらも当時まだ30代の若き二人のソリストを意識して書かれたこの作品は、同じく二人のソリスト(ヨアヒムとハウスマン)を念頭に書かれた二重奏協曲を思わせるソロの応酬が見られる中に、1889年のop.8を作曲する中で今一度1854年のバージョンを見直して若き日を振り返るような感動的な瞬間が散りばめられています。
ピアノ三重奏というジャンルにおいて、ブラームスがどのように物語を締めくくったのか、その一部始終をこの二つの作品の中にお聴きいただくことが出来ればと思っています。
― カフェ・モンタージュ 高田伸也
ライブ音声配信
・最高峰の機材を使用した高音質配信です
・公演から1週間後までアーカイブ視聴可
*映像はございません
料金:1000円