エウテルペーというのはギリシャ神話に登場するゼウスの9人の娘の一人で、詩、劇、音楽、美術の発展に寄与した"抒情詩のミューズ"と呼ばれていました。
1864年にまだ21歳だった若きグリーグが、メンデルスゾーンやシューマンの友人であったゲーデやホルネマンといったデンマーク人の先輩作曲家と出会い、北欧の新しい音楽のための団体を設立する際に、その音楽協会にエウテルペーの名前を冠したのでした。この6年後にフランスで国民音楽協会が設立されたことを考えると、その土地・地域の個性というものを芸術においてもはっきりと自覚することが「近代」の認識、そしてインスピレーションと深く結びついていたことがうかがえます。
そうだとすると、この翌年に作曲されたグリーグのヴァイオリンソナタは、そうした「近代」における室内楽作品の最初期の作品ということが出来るかもしれません。後年グリーグはノーベル賞詩人のビョルンソンにあててこのように書きました。「3つのソナタは私の最高傑作のうちのひとつであり、私の成長段階における3つの時期を現しています。第1期はお手本となる優れた作品がまだ周りに豊富にあった素朴な時代、第2期は国民的な、そして第3期はより広い視野を持った時代です。」(1900年)
今回黒川侑さんのご紹介で初めてご出演いただくピアノの石井楓子さんは、以前に京響の定期演奏会で三善晃のピアノ協奏曲を演奏されたのを聴いて素晴らしかった記憶がありますが、その後グリーグ国際ピアノコンクールに優勝されたとのことで、今回黒川さんと一緒にどのようなグリーグを聴かせていただけるのか大変楽しみなところです。
ノルウェーの国民楽派の巨匠として、また近代音楽の創始者の一人としてのグリーグの魅力が詰まった3曲、その全てを名手二人の演奏でお聴きいただく貴重な一夜。皆様、是非聴きにいらしてください。
終演後にはレセプションも開催予定です。グラス片手に余韻の漂う中でのひとときをお過ごしください。
― カフェ・モンタージュ 高田伸也