今回のリサイタルプログラムは、アルベニスとラヴェルを組み合わせたコンサートの第1回目として、アルベニス「イベリア」第1集と第2集、そしてラヴェルの「鏡」を取り上げます。
イベリアはご存知の通り、アルベニスの最大にして最後のピアノ作品です。
アリシア・デ・ラローチャが「イベリアはイベリアのための技術が必要である」と言っていたように、かなり特殊な記譜法や楽譜に書かれた記号と言葉を解明する読譜力と、左右の手のコーディネーション、或いはアレンジメントが必要です。
今回はまず前半の第1巻と第2巻の全6曲を演奏します。
Evocacion
El puerto
El Corpus en Sevilla
Rondena
Almeria
Triana
幾つかの作品は非常に困難なパッセージを含んでいる事で有名ですが、アクロバティックな技術的側面以上に、この作品集が持つ1曲毎の個性、独特の色彩感、リズムの多様性、ペダルを含むピアノの音色を最大限に生かしたテクスチャーの美しさなど、オーケストラ的でありながら、ピアノでなければ絶対に表せない作品、アルベニス以外は書けない作品とも言えます。
ラヴェルの鏡もイベリアの第1巻も全く同じ1905年から1906年に作曲、出版された作品です。(イベリア第2巻は1906年に完成され、1907年に初演&出版。)
ラヴェルの鏡は、ドビュッシー映像第1集(1905年)ともほぼ同時期に書かれています。彼らの個性や作曲法が全く異なる事は言うまでもありませんが、ドビュッシーの前奏曲などの作品と同様、喚起されるイメージ上の場所、時間、文化が1曲1曲異なります。
例えば第1番Noctuelles はフランス的、第2番Oiseaux tristesは東南アジア的、或いは熱帯的、第3番Une barque sur l’ocean は地中海的、又はケルト的、第4番Alborada del graciosoはスペイン的、第5番La vallee des clochesはスイス的と(少なくとも表面上は)感じられるかもしれません。
第4番の有名な道化師の朝の歌は、スペイン風のリズムを持つ作品です。母親がマドリード育ちのバスク人でスペイン語を喋っていたので、ラヴェルにとってスペインは半分自分の母国のように感じていたに違いありません。
ラヴェルの素晴らしさは、すべての作品に静謐な詩情が根底として流れていることです。
前述のイメージでさえも、具体的なものではなく、そっとほのめかされているだけです。
カフェ・モンタージュのスタインウェイが製造された1905年と同時期に生まれた両作品をお楽しみ頂ければと思います。
― 上野真(2026.2)