MONTAGE+
「世紀を問う音楽の話」

2026年5月21日(木) 20:00開演

大田美佐子

レクチャー




入場料金:2000円



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〔会場〕
カフェ・モンタージュ ≫ 地図
京都市中京区五丁目239-1(柳馬場通夷川東入ル)
TEL:075-744-1070


【クルト・ヴァイルの世界をめぐる一夜によせて】


「クルト・ヴァイルの世界」のことを考える時は、いつも新たな発見で新鮮な気持ちになり、人前で話す時はどんな展開になるかな、とどきどきします。
このたび、憧れのカフェ・モンタージュでお話ができることをとても光栄に思っています。
「歴史は繰り返す」とは言いますが、20世紀のモダニズムは高揚だけでなく、抑圧と争乱の過酷な時を過ごしました。21世紀の20年代に生きる私たちの足元は、今まさに揺らいでいるようにも感じますが、過去100年から何を受けとっているのでしょうか。私は今も、声を奪われた人々、失いつつある人々の創作の過酷な状況を想うたびに、ヴァイルのあの気骨ある発想力が問いかけてくれている気がしてならないのです。
トークから約一週間後、5月29日(金)の太田真紀さんと前田裕佳さんのクルト・ヴァイルのリサイタルが、さらに楽しみになるようなお話もたくさんできたらいいなと思っています。皆さまのご来場を楽しみにお待ちしています。

― 大田美佐子
(神戸大学・人間発達環境学研究科教授)




ヴァイルとの邂逅

クルト・ヴァイルは二人いるという。
一人目はブレヒトと共に『三文オペラ』を書いたクルト・ヴァイル、二人目はファシズムから逃れた先のアメリカで音楽劇を書き続けたクルト・ヴァイル。

大抵の人は一人目のことしか知らないだろうと思いきや、デビッド・ボウイやルー・リードが歌うクルト・ヴァイル、ジャズのスタンダードとなったクルト・ヴァイルは二人目の方で、それなら有名なのはそちらのクルト・ヴァイルなのではないか。
音楽学において、一人目のクルト・ヴァイルと二人目のクルト・ヴァイルを扱うには最低でも二人の学者が必要であり、クルト・ヴァイルがどのような作曲家であったかを知ろうとする人は、二人のクルト・ヴァイルについてそれぞれ書かれた最低でも二冊の本を読まなくてはいけない。

そこには第二次大戦後の文化が体現してきた二重性が大きく関わっている。つまり、1920年代に現れたモダニズム(ジョイス、デュシャン、シェーンベルク、ダダ、シュール・レアリスム)と直結したいとする戦後前衛、そして1930年代の大衆文化と地続きの大消費文化という二重性。クルト・ヴァイルはその二重性のどちらにもおける源流であり、第二次大戦後にそれらが根深く分断される真っ最中の1950年に死んでしまったことによって、「二人のクルト・ヴァイル」として生き続けることになった。
クルト・ヴァイルがもしあと5年でも長く生きていて、戦後の分断の最中で制作を続けていたとすれば、それは一人目としてなのか、もしくは二人目、あるいは三人目が出現していたとすれば戦後の音楽文化は大きく様変わりしたのかもしれない。

"二人のクルト・ヴァイル"の人生を途切れることなく一気に横断する大著『クルト・ヴァイルの世界』(2022/岩波書店)の著者である大田美佐子さんをお迎えして開催するMONTAGE+では、お話と音源などを通じてヴァイル作品の魅力に触れながら、今日モダニズムと呼ばれる100年前の空気とその香りにも迫ることが出来ればと思っています。
是非皆様のご参加をお願いする次第です。


― カフェ・モンタージュ 高田伸也