「新たなる出発」vol.7
2026年6月19日(金) 19:30開演
【プログラム】
B.マルティヌー:
弦楽四重奏曲 第7番 H.314 (1947)
"Concerto da camera"
Poco allegro
Andante
Allegro vivo
A.ドヴォルザーク:
弦楽四重奏曲 第12番 ヘ長調 op.96 (1893)
Allegro ma non troppo
Lento
Molto vivace
Finale
2026年6月19日(金) 19:30開演
"America"と呼ばれる前は、"Nigger"だった、、と知ったのは、この曲の古いレコード盤を手にした時だった。作品中に黒人霊歌に影響を受けたらしき旋律が出てくるからとのこと。
ポール・トーマス・アンダーソンの映画『マグノリア』(1999)の中では、黒人の少年が警察官に「犯人を教えてやる」といいながら流暢なラップを歌い出すのだけれど、その中で少年がN-wordを連発し、警察官が「その言葉は君が使っちゃいけない」と強く注意して去る場面がある。
そして、2018年5月にアラバマであったケンドリック・ラマーのコンサートでは、舞台に上げられた白人の女性がラマーのラップに合わせてやはりN-wordを連発し、ラマーが歌うのをやめて「その言葉は君が使っちゃいけない」と女性をたしなめたことが問題となって大炎上した。
“You gotta bleep one single word, though.”
たかが言葉、されど言葉。一度定着したイメージを塗り替えるのは大変だけど、今のうちに次の名前も考えておいた方が良いのではないか。
マルティヌーはずっとチェコに帰りたいと思っていて、ようやく大戦が終わって、チェコの音楽院から教授になって欲しいと依頼が来たから喜んだ。自分は仕事があるからと妻のシャルロッテに頼んでチェコに家探しに行ってもらっている間に、マルティヌー本人は家のバルコニーから落ちて重傷を負った。
チェコに帰るという話は有耶無耶になって、そうこうしているうちにチェコではロシアの後押しで共産党が第一党になって、アメリカにいるマルティヌーはいよいよ故郷に帰りにくくなった。
ようやく怪我から回復して、でも帰国への望みはいよいよ絶望的になった中で書かれた弦楽四重奏曲第7番には、モダニズム台頭の中でも古典的な構成を守り抜いたマルティヌーの神髄がつまっている。
ハイドンの最後のカルテットを思わせるような動機が旋回する最終楽章は、のちのチェコスロヴァキアが舞台となって書かれることになる小説『存在の耐えられない軽さ』の名付けようのない明るさと悲しみが先取りされている、、そして、こうした旋回はベートーヴェンの最後のカルテットにも、そしてドヴォルザークのAmericaにも、ハイドンも含めてこの3曲は全てヘ長調、、と連想は膨らんで、これはマルティヌーが引き受けた伝統の重みが生み出した軽さなのではないかと思う間に、本当に最終回となりました。
2022年の5月にはじまったシリーズがいよいよ完結します。これからも変わらず名曲であり続けるであろうAmericaを最後に聴くことの意味は、これからあらためて考えていくことになるのだと思っています。
最終回だからこその、新たなる出発。また終わりのない旅へ。
皆様是非お集まりください!
― カフェ・モンタージュ 高田伸也