終りの音楽

永遠に続く 永遠に終わらない いつか終わる
絵画は平面 もしくは平面に近いものに固定され 永遠にそこにあって いつか終わる
過去は どこに固定されているのか 永遠に保存されて いつか終わる
不滅は いつか死に絶える

ある時 例えば髪の毛を洗った後 タオルで頭を無茶苦茶にしている最中に すべての疑問が一つの問いに集約されて その問題が解けた と確信することがある。しかし、自分の人生がそこで終わってしまうことに対する抵抗と怠惰を覚えて やがてすべてを忘れてしまう。

起きながらに夢を見ることがあるかといえば そんなことはしょっちゅうある。目を開きながら見る夢の中でひらめいた良い考えを そのまま発話して目の前の人に伝えようとすると とんでもないことになる。そのような言葉 人に知られずに消えてゆく言葉を 今は書き綴っておきたいと思った。

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事象の地平線、時間の終り

ブラックホールの撮影に成功した、ということであった。
そこには「事象の地平線」という、極端に詩的な、ひとつの言葉が置かれていた。

27歳で戦死した詩人ミルモンの遺作による歌曲集『幻想の水平線』を思い出した。フォーレの最晩年、1921年の作品である。

船がすべて出払った港に、一人たたずむ詩人の叫び。
「私にお前たちの魂を繋ぎとめることは出来ない。
お前たちには私の知らない、はるか遠い世界が必要なのだ。」

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小説「令和」

4月1日
元号がかわる、という夢を見た。
元号は「久平」である。

気が付くとそれはもう決まっていたことで、自分は納得ずくの表情を浮かべていたに違いない。自分はさっそく、その元号が書かれた紙を片手に、久と平の両方の文字が名前に含まれている友人に祝いのメッセージを書いていた。
友人は恥ずかしそうに既読マークをそのメッセージにつけた。

平成が終わるというので いま読まないとたぶん一生読まない作品を読もうと思って、村上春樹の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を読んでいた。

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