シューベルトとリスト 隠れた世界への扉

ブルックナー交響曲第8番は、第23小節目から始めれば「魔王」

そのようなことに気が付き始めたのは、つい最近のことだ。

ブルックナーの魔王は、はじめは遠くにうろうろしている魔王が見えてなんだか「気味が悪い」と思っていたら、いきなり目の前に、思ったよりも大きな姿で現れて連れていかれてしまう。
そしてシューベルトの場合は、いきなり魔王が現れて、連れていかれる。 “シューベルトとリスト 隠れた世界への扉” の続きを読む

シューベルト、こちらへ

Du mußt es dreimal sagen.
「おはいり」、とファウストは3度言わなければならなかった。
オペラ「ルル」原作の冒頭の長台詞においても、ヴェーデキントは「おはいりなさい」と3度、猛獣使いにいわせている。

ウェーバーの「舞踏への勧誘」でも、大変に長い3度目の「おはいり」のあと、ようやく舞踏会への入口が開かれる。

ベートーヴェンも2度目の脅しつけるような「おはいり」のあと、3度目の「おはいり」が長く、そのまま追っかけ合いの舞踏会に突入する。

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フランク、ヴァイオリンソナタ

フランクのヴァイオリンソナタがどのようにして発生した音楽であったか、これまで考えたことがなかった。考えようがないとも思っていた。しかし、フランクの全作品中でも際立って古典的な佇まいを示しているこのソナタの第4楽章に、突然別の音楽が重なって聴こえたことでそうも言っていられなくなった。 “フランク、ヴァイオリンソナタ” の続きを読む

忘れられたロマンス

1880年、70歳を迎えようとしていたフランツ・リストのもとに出版社から一つの古い楽譜が届いた。「ロマンス」と題されたその作品は、リストが33歳の時に作曲した歌曲をその4年後にピアノソロに書き換えたもので、知る者のごく少ない作品であった。

その古い「ロマンス」の楽譜をどこかで入手した出版社が、この知られざる作品は売れると判断したのだろうか、新たに出版するため老リストにお伺いを立てたというわけである。

さて、ワーグナーの台頭ととも和声の崩壊が叫ばれてすでに久しく、「巡礼の年 第3年」をすでに書き上げ、人に先んじて無調の音楽に向かっていた時期、リストは出版社から送られてきた楽譜を全面的に書き換えて室内楽作品と し、「忘れられたロマンス」と題を付けて出版社に送り返した。

我先に、常に前を向いて進まなければならない。
世のそうした流れの中で、芸術はその最先端の形を映すと同じだけ、人生を振り返る良き時間をも与えてくれる。

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2016年12月14日(水)20:00開演
「忘れられたロマンス」
ヴァイオリン:佐久間聡一
ピアノ:鈴木華重子
http://www.cafe-montage.com/prg/161214.html