このような最期の言葉

ベートーヴェンは1827年3月26日に死んだ。

作曲家みずからが生前に希望していたからだとか、有名な「ハイリゲンシュタットの遺書」の中で、死の原因を自分の死後すぐに記録せよと書いていたのに従ったのだとか、色々と言われているが、ともかく、ベートーヴェンは死後すぐに解剖された。

56年の生涯、その死因のもっとも重要なものは「肝硬変」であり、その原因の最も重要なものはワインの飲みすぎということである。

ベートーヴェンは最後に立派な辞世の言葉を残していて、それはイタリアのコメディア・デラルテの決まり台詞にちなんだもので、

「諸君、拍手をしたまえ。喜劇は終わった!」

という文句だったのだが、そのあとで、ずっと以前に出版社のショットにおねだりをしていた大好物のワイン12本が随分遅れて届いたのを見て、つい発した言葉が最後の言葉になってしまった。

「残念、無念、遅すぎた!」

ベートーヴェンはすぐ昏睡状態に陥り、その二日後、1827年3月26日に死んだということである。

ベートーヴェンがアルコールの超過摂取による肝硬変および鉛中毒に悩まされていて、それが彼の耳とおなかの具合に影響していたということが言われている。でも、死んだのがワインの飲みすぎのせいと言われていることについては、鉛中毒で死ぬほどのワインを一人の人間が飲んだと考えるのは、難しいとも言われている。

それにしても、辞世の言葉がワインのせいで書き替えられたとすれば、ベートーヴェンはワインを恨めばいいのか、出版社に文句を言えばいいのか、どちらも彼の人生を支えていた立役者であっただけに、余計にやりきれない話ではある。
でも、ベートーヴェンほどの人だから、それがつい口にした言葉だったとしても、最後にそう言って終わる人生を選んだということかもしれない。

「遅すぎたのだ!」

 

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20年3月26日(木) 20:00開演
「愛は風にのって」
ピアノ:仲道祐子

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