フォーレ、水面に映る世界

「いま、なにか作曲をしていらっしゃいますか?」

死までの1年間、ガブリエル・フォーレはそのように尋ねられると決まって「いいえ」と答え、いま自分が弦楽四重奏曲を書いているという事実を隠し続けていた。

1922年。
恩師であり、唯一無二の親友、互いにとって最大の理解者であったカミーユ・サンサーンスの死から1か月後、英雄の死を描くような最後の夜想曲をやっとの思いで書き上げたフォーレは、目を未来に向けた。
そこには、彼が後世に残した最大の存在、モーリス・ラヴェルの姿があった。

1923年
フォーレはロンサールの詩につけた歌曲を作曲したが、終戦と母の死を同時に体験したあと、ほとんど作品を発表していなかったラヴェルが、ちょうど同じ時に、同じ詩に曲を付けたことを知ると、すぐに廃棄してしまった。
そのようにして、フォーレ最後の歌曲は失われてしまった。

その反面、
すでにラヴェルがいずれも時代最高の傑作を書いてしまっていた2つの分野、これまでには目を向けることのなかったピアノ三重奏と弦楽四重奏の世界にフォーレは足を踏み入れた。

最晩年。自らの創作が、未来のためのものであることが確実となったその時間をフォーレは目を開けて過ごし、そして段々に閉じていった。

1924年9月12日、フォーレは弦楽四重奏曲の完成を妻に告げた。
その1週間後、フォーレの両肺に炎症が起こった。
それから2週間後、11月4日の早朝にフォーレは息を引き取った。

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2020年10月16日(金) 20:00開演
「エンヴェロープ弦楽四重奏団」 vol.14
ベートーヴェン:
弦楽四重奏曲 第14番 嬰ハ短調 op.131
フォーレ:
弦楽四重奏曲 ホ短調 op.121

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