カルメン、幻想と夜の歌

果たして、自分はカルメンの物語を知っていただろうか。
ロームシアターでの小澤征爾音楽塾公演の「カルメン」を観て、
これまで自分は知らなかったのだと思った。

カルメンを観たのは、初めてではない。
2000年にウィーン国立歌劇場で、ド・ビリーの指揮。
カルメンはアグネス・バルツァだった。
BS放送で見たのと同じ人がカルメンを歌っている… というだけで胸がいっぱいになり、カルメンが登場した瞬間から圧倒的な熱量を受け続けた強烈な思い出ではあるけれども、作品に関しては、カルメンのお話は知っている…、音楽も有名、とだけ思っていた。

でも今回、自分は知らなかったものを観てしまった。

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ブラックスミス、ブゾーニ

謎めいた大作として知られているブゾーニのヴァイオリンソナタは、ひとつにはバッハのコラール、そしてもうひとつにはベートーヴェンのOp.109であるホ長調のピアノソナタに範を求めているのだという。
バッハについては旋律がそのまま作品中に出てくるのけれど、ベートーヴェンについてはその「緩-急-変奏曲」の形式に倣ったとだけあって、とまどってしまう。

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シューベルト、こちらへ

Du mußt es dreimal sagen.
「おはいり」、とファウストは3度言わなければならなかった。
オペラ「ルル」原作の冒頭の長台詞においても、ヴェーデキントは「おはいりなさい」と3度、猛獣使いにいわせている。

ウェーバーの「舞踏への勧誘」でも、大変に長い3度目の「おはいり」のあと、ようやく舞踏会への入口が開かれる。

ベートーヴェンも2度目の脅しつけるような「おはいり」のあと、3度目の「おはいり」が長く、そのまま追っかけ合いの舞踏会に突入する。

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