「ペレアスとメリザンド」 ミンコフスキ=オーケストラ・アンサンブル金沢

ことのはじめ
さまよう 出会う 魅惑される 誘惑する
運命なきところに 運命の糸が芽生える

稀有の天才による最高傑作とされ、しかしその実演に触れる機会にめぐまれず ドビュッシーについて考えるたびに、後ろめたい気持ちにさせられてきた。

秘かな、でも最大限の期待と覚悟をもって臨んだ2018年7月30日
「ペレアスとメリザンド」を初めて観た。

舞台の上には はじめに女 そして男がいた。
しかし 関係性があいまいになり 彼らが普通の男ではなく 女でもないことに思いが至って 音楽が常に纏っている静けさにいつのまにか包まれて逃げられなくなった時に この体験そのものが詩なのだと了解した。

ここにはさまざまな両極が示されている
男と女
父と母
兄と弟
若さと老い
明と暗
光と影
水と気体
問いと答え
生と死

いずれの人間も その間に位置していることでその存在を認識している
私はどこにいるのだろう

人は何歳になった時に 若さに対して郷愁を感じることになるのか
自分はいつから老いることに憧れを持ちはじめ そしてそれを忘れるのか
明るい場所から 暗闇を望み
生まれたことも 死ぬことも 知らない

「すべてを理解した」と幾度も発せられる宣言は
次の瞬間にはすべて無に帰する

完全に結ばれたその瞬間 すべては無に帰する

無を追いかけることは出来ない
涙がとまらなかった

これは ある典型的人物について書かれたドラマではない
ことの全てについて 全ての人に問いかけているのだから
これは 詩なのだ。

全ての人が読むための それ独自の形式を追い
人が読み それを伝えることによって 無限に完成される表現形態
彼方では 牧神と水の精が 並んで横たわっている

本当に出会うことが出来て良かった。
この企画の実現に関わったすべての方へ
本当にありがとうございました。

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オーケストラ・アンサンブル金沢
第405回定期公演フィルハーモニー・シリーズ
ミンコフスキ芸術監督就任記念

2018年7月30日(月)18時30分開演
「ペレアスとメリザンド」

指揮 マルク・ミンコフスキ
ペレアス スタニスラス・ドゥ・バルベラック(テノール)
メリザンド キアラ・スケラート(ソプラノ)
ゴロー アレクサンドル・ドゥハメル(バリトン)
アルケル ジェローム・ヴァルニエ(バス)
ジュヌヴィエーヴ ジュリー・パスチュロー(メゾ・ソプラノ)
イニョルド マエリ・ケレ(アキテーヌ声楽ユース・アカデミー)
医師・牧童 ジャン=ヴァンサン・ブロ(バス)
合唱 ドビュッシー特別合唱団

演出 フィリップ・ベジア、フローレン・シオー
衣裳 クレメンス・ペルノー
照明 ニコラ・デスコトー
映像 トーマス・イスラエル
舞台制作 ボルドー国立歌劇場、石川県立音楽堂

於:石川県立音楽堂 コンサートホール

http://www.oek.jp/event/1045-2