ツェムリンスキー:弦楽四重奏曲 第2番

なぜこのような作品が誕生したのか。
この長大な作品を何度も繰り返し聴きながら考えていた。

この作品に関しても、作曲家ツェムリンスキーに関しても、読むことの出来る情報は驚くほど少ない。
シェーンベルクが「いずれ、おそらく私が考えるよりも早く、彼の時代が来る」と書いたように、ツェムリンスキーのリバイバルを目論んだ動きはこれまでにもあったらしい。
まずは生誕100年である1971年以降のこと。1960年代から沸き起こったマーラー・リバイバルの勢いが「彼の友人であるツェムリンスキー」にも波及した形で楽譜が出版され、 “ツェムリンスキー:弦楽四重奏曲 第2番” の続きを読む

カルメン、幻想と夜の歌

果たして、自分はカルメンの物語を知っていただろうか。
ロームシアターでの小澤征爾音楽塾公演の「カルメン」を観て、
これまで自分は知らなかったのだと思った。

カルメンを観たのは、初めてではない。
2000年にウィーン国立歌劇場で、ド・ビリーの指揮。
カルメンはアグネス・バルツァだった。
BS放送で見たのと同じ人がカルメンを歌っている… というだけで胸がいっぱいになり、カルメンが登場した瞬間から圧倒的な熱量を受け続けた強烈な思い出ではあるけれども、作品に関しては、カルメンのお話は知っている…、音楽も有名、とだけ思っていた。

でも今回、自分は知らなかったものを観てしまった。

“カルメン、幻想と夜の歌” の続きを読む

ヴェニスに死す

いまさらながらに「ヴェニスに死す」を読んでいる。

この作品は少年愛について語っている。少年とは誰のことか、それが問題である。これをある特定の性癖の描写だとみる人は、もしかしてギリシャの少年愛についても同じように考えたりするのだろうか。別に…それでもいい。

Boy with Thorn
「とげを抜く少年」の横顔を持つ少年をひたすらに追いかける作曲家、アッシェバッハのモデルは、その小説が書かれた年、トーマス・マンがヴェニスに向かって旅する、その出発の直前に死んだ親友グスタフ・マーラーであるとされている。 “ヴェニスに死す” の続きを読む