劇場とは

劇場とは何か。

劇場はたんに音楽をするところではなく、演劇をするところでもない。
人が一人で存在することの完全な肯定、手にすることのできる完全な自由を求めて、人々の全く違う時間の流れが交差し、しだいにひとつの時間の流れを生み出す場所。

過去と現在。さまざまな場所、さまざまな時間の流れを経てたどり着き、席についてしばし沈黙を体験したそのあと、拍手喝采、そして開放の時間。
夜の暗い路地に出て、凝縮した時間を解きほぐしながら帰途につく、その体験の豊かさを約束する場所。

明日はどうしようか。…次の行き先が、常に用意されている場所。

京都に新たな劇場をつくる。
その理想的なモデルをウィーンの街に見出してオープンしたカフェ・モンタージュ。2012年の3月にカフェをオープン。ウィーンのカフェハウスへの憧れを込めて、銀色の盆に砂糖とミルク、そして水グラスをセットして、コーヒーの提供を始めました。

そして、最初の公演を行ったのは今からちょうど五年前の5月、演目は地点=シェイクスピア「最後の悲劇」。それもウィーンでの劇場体験への憧憬から、演劇と音楽の境目を飛び越えることをまずは目標と定めた、カフェ・モンタージュが発した最初のメッセージでした。

五年も続ければ、何かが見えてくるはずだと様々な方から励ましを受けて五年が経った今、現在のカフェ・モンタージュから見える限りの景色、想像の限りを尽くして特別な音楽祭を企画しました。それが「ウィーン音楽祭」です。

いまウィーンで行われていることを再現するのではなく、京都にウィーンを出現させること。ウィーンを作り上げたものは何か。ウィーンをどのようにして創造することが出来るのか。それにはまずウィーンを知らなければならない。
大きな物語です。