フォーレ、2つの四重奏曲

1880年の初演のあと、すでに出版の決まっていたピアノ四重奏曲 op.15(1879年版)の第4楽章を、フォーレが書きなおすことにした具体的な理由は分かっていない。第1から第3までの楽章だけを出版社に手渡したあと、全く新たな第4楽章が完成したのは4年後の事であった。もともとの第4楽章については何の情報も残されていない。

新たな第4楽章付きのピアノ四重奏曲(以下、op.15と記載する)が初演された1884年、フォーレはすでに次のピアノ四重奏曲(以下、op.45と記載する)の作曲に取り掛かっていた。op.15の出版において全く報酬を得ることのなかったフォーレが、なぜ誰にも頼まれることなくop.45を書くことにしたのか…。 “フォーレ、2つの四重奏曲” の続きを読む

点描画法、色彩論

Signac - Place des Lices

飲み物の味が、容器の材質や口にあたる部分の形状によって変わる。そんな事は誰でも経験している。それは全て人間の感覚の不安定さによるもので、飲み物の成分に変化がない以上それは化学変化ではない。栄養か毒かを識別するのが目的ではない以上、自分は味の変化というものを何のために感じているのか。

そもそも味とは何か。その議論が、うまさ、ということに終始するのであれば、それは音楽におけるうまさと同じで、その場における第一の慰めであると同時に、明日にはもう頼りがいのなくなる指標なのだ。ところで、プラシーボ(喜びという意味だそうだ…)という名前の薬は実在する。 “点描画法、色彩論” の続きを読む