ベートーヴェンとプロイセンの幽霊

幽霊とは、マクベスが魔女の宴の中で見たバンクォーの幽霊の事だろうか。

友人コリンが脚色したシェイクスピアのマクベスに、ベートーヴェンが音楽をつけようとしていたのは1808年、交響曲第5番と第6番を続けて書いていた時期の事であった。
この二人の共同作業からすでに『コリオラン序曲』という傑作が生まれていて、マクベスは本格的なオペラとなるはずであったかどうか、コリンが1811年に死んでしまったためにいくつかのスケッチが残されたのみとなった。

ベートーヴェンのいわゆる”田園スケッチ帳”(1808)にそのマクベスの導入がほんの少し記されていて、ベートーヴェンがその時すでにオペラ『マクベス』に取り掛かっていたという証拠となっているのだが、 “ベートーヴェンとプロイセンの幽霊” の続きを読む

バルトークの憂鬱 対話をもとめて

第一次大戦がおわってまもなく、バルトークの音楽は急激に世間から賞賛を得ることになった。それまで孤独を極めていたバルトークは喜んだ。

しかし、彼はすぐに塞ぎ込むのだった。
民謡を採取しての旋律の研究がまだ中途のままであったのに、戦争で分断されたハンガリーの地方への道が閉ざされたままであったからである。それはバルトークにとっては未来への道をふさがれているのと同じことであった。 “バルトークの憂鬱 対話をもとめて” の続きを読む