マリア・ストゥアルト この世界から

1852年、ロベルト・シューマンの手には女王マリア・ストゥアルトの5つの詩があった。
それは年代順に女王が19歳、24歳、26歳、43歳、そして死の年の44歳に書かれたという5つの詩であった。

 

「マリア・ストゥアルトの5つの詩」op.135

1曲目 ト長調
フランスを離れる女王の詩 一度目の夫、フランス王との死別

2曲目 ト長調
スコットランドでの二度目の不幸な結婚 祝福されない長男の誕生

3曲目 ハ長調
夫の暗殺に関わり、スコットランドを追われたマリアが、逃亡先からイングランド女王エリザベスに書いた手紙

4曲目 ホ短調
エリザベス女王に対する謀反の嫌疑 死を覚悟するマリア

5曲目 ホ短調
マリアの最後の祈り

 

これをシューマンの人生に重ねてみた

1曲目 シューマン19歳
ベートヴェンとシューベルトの死後 ライプツィヒ大学を去りヴィークに師事 まもなく最初のピアノ作品を作曲

2曲目 シューマン24歳
天才少女クララとの運命の糸が絡まりはじめる 兄が死去 初めての憂鬱症ハンブルクでブラームス誕生

3曲目 シューマン26歳
クララと親密な中になるも クララの父ヴィークはシューマンを出入り禁止にする 以後、シューマンはクララにあてて大量の手紙を書き続けることになる

4曲目 シューマン43歳
デュッセルドルフでの指揮者としての活動に行き詰る 大変な憂鬱症 歌曲集「マリア・ストゥアルトの5つの詩」を書き始める

5曲目 シューマン44歳
ブラームスが登場する 翌年にライン川に投身


3曲目がクララの調であるハ長調 C-durで書かれていることや、4曲目と5曲目が歌曲集『詩人の恋』の「
ラインの聖なる流れに」と同じホ短調で書かれていることなど、この短い曲集に張り巡らされたシューマンの意図は、彼の神経のように恐ろしいほどに緻密だ。

おそらく彼の人生の全てはその通りに運び、この作品はシューマンにとって最後の歌曲作品となった。

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2019年11月19日(火) 20:00開演
「マリア・ストゥアルトの詩」
メゾソプラノ: 三井ツヤ子
ピアノ: 久保千尋

https://www.cafe-montage.com/prg/191119.html